足を噛み壊す強い皮膚病

シーズーのケンタロウ君。14歳になる男の子です。

何年か前からずっと皮膚病だったらしく、アトピーの治療を飲み薬等でやってきたけれど良くならない、最近は特にひどくなってきたとのことで当院を受診されました。

皮膚の状態を見ますと、写真のように前肢と後ろ足が特にひどく、出血しており、よく見るとところどころに穴が開いて化膿している状態でした。
これは、痒さのため、犬自身が自分の足を噛むために起こります。
その他、脇から胸、お腹の皮膚も荒れています。確かにアトピー性皮膚炎を思わせます。
しかし、皮膚表面の検査をしてみるとアトピー性皮膚炎でよく見られるブドウ球菌の増殖が見られません。マラセチアという酵母菌に至ってはまったく見られません。
また外耳炎もありません。足を噛み壊すという症状も特殊です。

ケンタロウ君の病気は、毛包虫という寄生虫による皮膚炎でした。
毛包虫は文字通り毛穴の中に寄生する虫です。長細い形をしており、たくさん足が生えています。毛穴の中で皮脂を栄養源に寄生します。
この寄生虫は健康な犬の毛穴の中にも少数存在すると言われています。通常はただ存在するだけでこれといった病原性は発揮しません。ところが、一部の犬にはなぜか大量に増殖し、皮膚をどんどんおかし、やがては全身がぼろぼろになるまで悪化する皮膚病として警戒されています。
なぜ普通は大人しい毛包虫が、これほどまで増殖し皮膚を壊すのかはよくわかっていません。一つには犬自身の免疫力の欠損があると言われています。それは先天的であれば小さな頃から発症しますし、後天的であればある程度高齢になってから起こることもあります。
この病気の検査は、皮膚表面の掻き取りや病変部の抜毛による顕微鏡検査となります。

治療は、薬浴や抗寄生虫薬の投与になります。ケンタロウ君も、治療開始から1ヶ月後くらいにはすっかり良くなりました。
現在は、お薬と時々薬浴に通う日々です。
ぐっすり眠れるようになって、長生きして欲しいですね。