治療への取り組み

【ハムスターの脱毛症】

今回の症例はゴールデンハムスターの皮膚脱毛症です。
頭部の毛が少し抜けていることを飼主さんが見つけました。
一見すると、ゲージ内のトンネルのくぐり抜けで擦れたのかなと思ってしまいます。
ところが、毛の一部を抜いて染色し顕微鏡で観察してみますと、毛包虫という寄生虫が見つかりました。

毛包虫は健康なハムスターの皮膚にも存在している常在寄生虫です。しかし、ときどき増殖し、皮膚に障害をもたらすことが知られています。
何が原因で増殖するのかはよくわかっていません。それは毛包虫によるものかも知れませんし、ハムスター自身の抵抗力の問題かも知れません。
犬では毛包虫は、しばしば難治性の皮膚炎として問題になります。犬の全身性毛包虫症は、犬の免疫力の低下や欠損が一つの大きな原因であることがわかっています。
また治療薬の進歩もあり、比較的良好な改善が期待されるようにもなってきました。
ハムスターでも似たような病態が考えられますが、まだよくわかっていません。

今回は、脱毛範囲が狭い事、痒みがないことを考慮し、様子観察としました。
今後広がってくるようなことがあれば治療になりますが、いずれの薬剤も犬用や牛用で、ハムスターに安全とは言い切れません。
また無治療で悪化せず生涯を送れるケースも少なくありません。
できれば、キツい治療などせずとも、このままであって欲しいなと思う症例です。